世界の様々な国に独特の犬種の犬たちがいるようにアイスランドにもとてもユニークな犬が存在します。
小さな体ながら我慢強く、くよくよしない特徴的な性格を持ったアイスランド・シープドッグ。9世紀から10世紀の間にバイキングの先祖によって持ち込まれアイスランドに渡ったその血統は現在でもブリーダーによって守られ、主に牧羊犬として国内で活躍しています。15世紀にはイギリスの貴族女性の間で人気の犬種となった事や、シェイクスピアのヘンリー八世という戯曲の中に登場した事もあります。また、近隣の北欧諸国にも似た特徴の犬が存在しており特にフィンランドのカレリアン・ベア・ドッグが筆頭に挙げられます。
歴史を振り返るとアイスランドサーガでも犬については、犬種間の違いこそ区別されてはいませんが数々言及されています。その時代に存在した犬はアイスランド・シープドッグが多くを占めましたが、それだけが存在していた訳ではなく他にもアイリッシュ・ウルフハウンドなどの多様な犬種がいたようです。
中世に入ると当時のアイスランド人はイギリスなど貴族の住む国々へ向けてシープドッグの輸出を始めます。その頃までにシープドッグの血統はその孤立した土地柄から特有のものとなっていました。1755年にはフランスの学者ビュフォンが発表した資料において世界で30種類しかいない犬の血統の一つとしても挙げられています。
しかし20世紀には疫病などの様々な理由により絶滅の危機を迎えてしまいます。
そんな中、マーク・ワトソンというイギリス人がアイスランドを旅行中に生き残っていた少数の群れを発見しました。ウェストフィヨルドなどのアイスランドの中でもとりわけ孤立した地域に見つけられたのです。ワトソンは当時のアイスランドの獣医、パトル・A・パルスソンの助けにより何頭かの犬たちを繁殖のために一時アメリカへ送る事を成功させました。そして1960年代にはワトソン、パトルはシグリデゥル・ピェツルスドッティルという女性を仲間に加え南アイスランド、スケーダホレップルのオーラフスヴェトリルという牧場にて繁殖を開始するに至ったのです。
英国紳士、そしてアイスランド愛好家であったマーク・ワトソンは70年前からアイスランド・シープドッグを絶滅より救った人物として評されており、彼の誕生日である7月18日は「アイスランド・シープドッグデイ」として制定されています。
ピンと立った耳と曲がった尾、長くふかふかと厚みのあるロングコートのこのアイスランド・シープドッグは牧羊犬としてだけではなく番犬としても非常に優秀です。何者かが近寄ってきた時には大きく吠え知らせてくれます。また、人懐っこい一面もあり家族のペットとしても素晴らしい犬です。
絶滅の危機を乗り越えたとはいえアイスランドでも珍しい犬なので中々見ることが出来ないこの犬種。もしも旅行中に見られれば貴重な体験となる事間違いありません!